G式過剰



第27ステージ
『冬の恐怖 自爆編』

 冬に車を運転していて思うのは『つくづく道路という場所は危険だ』ということだ。車という閉鎖された空間をより強調させ、あたかも別世界にシフトしてしまったかのように感じさせる特殊なフィールド。それが冬の道路である。

 体力気力の萎えてしまった今ではとてもできないが、数年前までは毎月、いや毎週のようにスキーに出かけていたものだった。もちろん車で。しかも深夜出発で。
 車だと行動に幅が出るのは確かで、泊まりだろうと日帰りだろうと自由自在。そして帰りにちょっと離れた場所にある温泉に立ち寄ったりと、可能性は何倍にも広がる。
 しかしそれに伴う問題ももちろんある。渋滞等による時間の読めなさ、運転手の負担(酒が飲めないからね)などはよくいわれることだが、一番の問題はなんといっても降雪時の運転の危険性にある。
 そう、雪の中の運転は危険なのだ。路面が滑るからとか、そういうものではない。それは運転技術や製品技術でカバーできることだ。問題は別にある。運転に集中できない、集中させない要因こそが一番の敵である。

 具体的にシミュレートしてみよう。
 渋滞を避けるために深夜に出発する。思惑はあたり道路はさほど混むこともなく、無事高速に乗ることができる。甲府を過ぎ、須玉にかかろうかというあたりから雪がちらつき始め、やがてそれは本格的な雪へと変わる。冬のムードは一気に高まり、そしてそれは危険領域へ入ったことを意味しているのだ。
 高速道路には必要最低限の照明しかなく、車のヘッドライトだけが道路を照らす。暗闇を照らすライト。ふとそこで気づく。ライトが照らしているのは道路だけではない。
 雪。
 降りしきる雪がライトに白く照らし出されている。高速で走る車。暖房で暖かい室内は部屋にいるようで、結果、自分が白い雪の中を突き進むのではなく、雪が自分に向かって流れているように見える。そう思った瞬間、危険は最高潮に達する。なぜなら浮き上がった雪はミレニアムファルコンのワープシーンの再現だからだ。

[ワープしてみる]

 カッコイイ。見入ってしまう。
 いつしか道路ではなく雪ばかりに視線がいってしまう。前方不注意である。いや不注意どころではない。なぜなら見ていないのだから。しかも高速で走れば走るほどワープ感は増す悪循環。これを危険といわずしてなんといえばいいのだ。
 SF映画やアニメなどで育った世代には絶対にわかってもらえるはずだ。

 というわけで今回の教訓は『ワープ増妄法』ということで終わる。

2001年2月25日

G式過剰