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フェイシーズ
「あのさ。今、ボク、人面瘡にはまってるんだよね。人面瘡ってさ。できる場所って決まってるのかな?」
「絵づら的には頬に顔が浮かんで… ってのがよくあるパターンだけどね」
「ま、いろいろなんじゃない? やっぱ有名どころといえば膝とかでしょ」
「そう、膝だね。妖怪、膝小僧。膝だけによく笑うんだ。たくさん歩いたときなんか特にね、もうガクガク」
「その『笑う』って違うんじゃないのかなぁ」
「いいから。いいから」
「関節って瘤のようになってるし、しわの具合が顔に見えたりしたこともあったんだろうね。自分の意志に反して勝手に動いちゃうのも昔の人には何か別のモノが憑いたって思わせたんだろうね」
「クールだね」
「別に」
……………
「それはそれとしてさ。人面瘡だよ。要は体の一部に顔ができるんだろ。でもって別人格を持ってて、おしゃべりだったりする」
「人間の心の多面性を暗喩してるのかもしれないね」
「あのさ、人面瘡が顔にできてさ。それが元の顔より美人だったりすると悲劇かな。しかも性格も元のよりよかったりして」
「人面瘡ができた時点で悲劇だと思うけど」
「意外ともてたりして。しかも求婚されたりして。人面瘡の方が」
「『愛に障害はつきものだから』とか口説かれたりして」
「ああ、人面瘡だからね。憑き物だよね」
……………
「顔だから人面瘡っていうわけでしょ。別の器官が瘡になったらどうなのかな」
「どうっていわれてもなぁ」
「三本足だと思ったらただの人足瘡とか。三ツ目かと思ったらただの人眼瘡だったとか」
「すでにただの、じゃないって。それにネタがやばかないか」
「んじゃ、ペガサスは翼瘡のできた馬。ユニコーンは角瘡のできた馬ってのは」
「なんでもありって感じだよね。そこまでいったら」
「そもそもユニコーンとか空想上の生き物に瘡ってのはナシだろう」
「あのさ、男のイチモツの先っちょにイチモツ瘡ができたらうれしいかな。男として。長さ倍だよ、倍」
「アンタ下品すぎるよ」
……………
「人面瘡に戻るけど、体以外の場所にできたらどうだろう。例えば服とか」
「ピョン吉かよ。だいたいなんで服なんだよ。やっぱり取りつく相手は生き物じゃなきゃ変じゃないのか」
「じゃワニ皮とかヘビ皮の財布。一応、モト生き物だからいいでしょ」
「尻ポケットに入れておくと『尻に敷くな』とか『屁をするな』とかうるさそうだな」
「逆に女性の尻ポケットだったら喜んだりする。『ウヒヒ』とかいって」
「親父だよそれじゃ。でもウヒヒは人面瘡っぽいね」
「ワニ皮だったらワニ面瘡になるんじゃないのかなぁ」
「それ以前にそれって人面瘡じゃなくてワニゾンビっていわないか?」
……………
「一度にいくつも出てきたらうるさそうだよね」
「ボケる奴とか、変な蘊蓄たれたりする奴とかいろいろ出るんだろうな」
「だから現にそうじゃん」
(1997.08.15初稿/2000.02.25改稿)
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