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羽田発全日空991便は那覇空港に着陸体制をとりはじめた。それまで見えていた青い空、碧い海は、しかし飛行機が高度を下げるにつれ、暗雲に変わっていった。まさに一転にわかにかき曇りというやつで、大粒の雨が窓を打つ。南国の風物スコールだ。
そんな天候下、機は危なげなくランディング体勢をとり、無事滑走路に着地。接地の際の小さな振動を感じたオレは減速に備え座り直す。前に投げ出されるようなGに対応する反応するためである。が、しかし感じたのはシートに押しつけられるようなG。それはまさに飛び立つときに受けるものである。
そう、飛行機は着陸するやいなや、加速し始め、そして再離陸したのだった。よもや旅客機でタッチアンドゴーを体験するとは思ってもいなかった。
機内のアナウンスによると、大雨で着陸に危険があるため、急遽、着陸を取りやめたということだ。いやはや、いい経験をさせていただいた。不安感よりもワクワクの興奮、満足感でいっぱいのオレ。
ちなみに様子を見ての2度目の着陸は実にスムーズな動作であった。とっさの判断といい、操作技術といい、いずれ名のあるパイロットに違いない。と、そう確信した次第である。