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那覇から飛行機を乗り継ぎ、さらに1時間後、オレは石垣島の小さな空港に降り立った。外に出てみるとギラギラの夏の陽射しがオレを打つ。夏を満喫できそうだ。そう思うと純粋に嬉しさで顔も自然とにやける。あまりワクワクしたものだから、炎天下をバス停まで歩いてしまう。ところがこれが結構な距離で、たどり着く前にかなりへたばりが入ってきた。バカである。
今日はさらに船に乗り、これから2泊を過ごすこととなる竹富島へ向かうのだ。が、その前に昼飯を入れなければ。というわけで、石垣島の繁華街、アヤパニモールで八重山そばを入れる。さっぱりこってりの独特の風味が南の島にあっている。うまい。
腹が落ち着くと身体も落ち着いてしまうのか、ここでのんびりしたいのだが、そういうわけにもいかない。島へ渡るために、桟橋へ向かう。途中、時間待ちのあいだに飲もうと、地ビールを購入する。
離島桟橋へ到着すると、一瞬オレは動けなくなった。目の前に広がる風景に圧倒されたのだ。
海が青い。青いと言うよりも碧色。先までいって足下をのぞくと、海の底が見えるのだ。もちろん港である。かなり深いはずだ。なのになんでこんなに透明度が高いのだろう。これが八重山なんだ。と、ちょっとしたカルチャーショックを受けた。
竹富行きの船は、なんと3分後に出発するという。船は1時間に1便である。宿からは石垣の埠頭でいったん電話して欲しいといわれていたのだが、さて… いや、今我々はのってる。勢いに任せていっちまえ。ままよとばかりに船に飛び乗った。
船はちょっとでかいボートといった感じで中型の乗り合いバスである。時期的なものか時間的なものかよくわからないが、船内の乗客は二人だけ。ならばとばかりに、デッキを贅沢に使う。荷物をどっと置き、ビールの栓を抜く。とりあえず、乾杯。うん、うまい。
渡し船らしくほとほととのんびり動くのかと思ったらさにあらん。すさまじい勢いで波をけたてて疾走するのだった。おかげで波が跳ねる跳ねる。
照りつける太陽は、夏を主張し、跳ねる波はクーラーがわりである。ようやく夏休みが始まった。旅は始まったばかりだが、すでに心は満たされていた。ようするに船やビールに酔う前に雰囲気に酔っていたということだ。