…5
竹富島での宿は『民宿のはら荘』。真っ赤なブーゲンビリアに囲まれた、赤瓦づくりのいかにも沖縄らしい宿だ。
もっとも竹富島の建物は基本的にどこも赤瓦の伝統的なつくりなのだった。というのも竹富島は国の「まちなみ保存地区」に指定されており、(少なくとも外観は)伝統的な建築以外をつくることが禁止されているためである。この指定のおかげで竹富島の一番の観光スポットであろう島のまちなみが守られ、訪れた観光客(自分も含めて)も、旅情を味わうことができるというわけだ。
が、島で生活している人々にとってそれが必ずしも歓迎されているかというと、どうもそうではないのかもしれない。もしかすると保存地区であることで島の人々の生活を圧迫していることがあるのかもしれない。というのも、水牛車の島内観光をしているときのことなのだが、案内役のオジィが再三、保存指定についてにふれ、あからさまというほどではないが、なんとなく批判的な口振りだったせいである。
確かに、思いどおりに家が造れないというのは不便だろう。特に高層建築が建てられないというのはいろいろな面で厳しいことはあるだろうなぁとは思う。
でもお客様の視点であることを承知の上で、オレはそれでもやはりこのまちなみは魅力的であり残していってほしいと思う。自然やまちなみが保存されることで、この楽園が守られるのであるならば。
そう思わせるだけの力をオレは島から感じていた。
さて、のはら荘に話は戻る。間取り自体は、前述のとおり島にとってはありふれたつくりだが、この宿の特徴をひとつあげよと言われれば、ピーフンわきに張られた帆布製のタープと答えたい。タープの下にはテーブルとイスが置かれ、人がくつろぐスペースになっている。なにをするわけでもなく、なんとはなしに皆が集まってきては、なんとなく知り合いになっていく。そんなスペースである。もちろん夜ともなればそこが宴会場に化す。陽が暮れると、泡盛が置かれ、いつのまにやら宴会が始まる。興がのったオジィやオバァの三線が始まる。これが八重山民宿ライフなのだなぁ。
宿を切り盛りしているのは、ちょっとせっかちだが人のいいオジィ、そんなオジィを絶妙のフォローするオバァ、笑顔が底抜けにすてきなネェネェ。皆、気持ちのいい人たちばかり。あるいは宿のムードは、この人柄のなせる技なのかもしれないなとも思うのだった。