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さて、とりあえず部屋に重い荷物をおろしたオレ達は、旅の高揚感でえらく元気だった。そこで、さっそく島内を散策しに出かけることにした。
石垣の路地をほてほてと歩く。
とにかく見るもの全てが目新しい。例えば、珊瑚の石垣は有名な風景だが、同じく典型的なまちなみの屋根に置かれたシーサーが、よく土産屋で見かける工芸品として完成されたものではなく、もっとプリミティブな、悪くいえば雑なつくりで、ひとつとして同じものがないということを発見したりする。そんな些細なことが嬉しい。
御獄、こっちでは御願所やオンというらしいが、「島にはこれが6つあるよ」と宿のオジィが言っていたが、6つどころではない。それ以外にも大きいのやら小さいのやらがそこここにあるのだ。ようするに祭事としてのオンは6か所ということなのだろうか。あるいは素人目にはオンにみえるだけなのかもしれないけれど。
本などで仕入れた情報など実体験にはとうてい及ばない。
そうこうするうちに、といっても歩いて5分ほどなのだが、なごみの塔に到着する。丘というにもおこがましいくらいの小さな小山の上に立つコンクリづくりの展望台だ。山のない平坦な竹富島にあって、1、2を争う高所である。急な階段を登る。ふたりも立てばぎゅうぎゅうの小さな展望台から島をぐるり見渡す。本当に赤い瓦ばかりだ。西には西表島が見える。振り返ると石垣島があった。
さらに散歩を続ける。しかし“熱い”。歩く速度が遅くなってくる。暑さに負け始めてきたのだ。考えてみれば午後3時、照りつける太陽は今まさに絶好調という時間なのである。いい加減歩くのがいやになってきた。じっとしていても頭がぼおっとしてくる。まさに灼熱地獄。日の光が肩に重くのしかかってきているのを実感する。光は確かに質量を持っているのだ。
ふたりは「もういいやぁ」といいあい、残る最後の力を振り絞って、八重山そば屋「竹の子」に逃げ込む。カキ氷を食べようと思ったのだが、なぜか口からは「中ジョッキ2つ」という言葉が出ていた。それをグーッと喉に流し込む。快感。
結局、冷房のきいた店の中でだらだらと陽が弱まるのを待ちつつ、だらけるのだった。
なるほど、こっちの人達がとぅるばる訳がよくわかった次第である。