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八重山にマブイ落としに  …10

 コンドイ浜に果てはなく   

 あけて翌日。今日もまたドピーカンの遊び日和だ。
 午前中は島唯一のビーチ、コンドイ浜に行く。ビーチといっても、湘南海岸のように“海の家”的な施設などはない。ビキニ姿のいかにも島で生活してますといった雰囲気のネェネェがバンを1台浜辺につけて、ビーチパラソルからシュノーケリング、かき氷といった海辺商売をしているだけ。更衣室兼シャワーは無人の無料で、とにかく気やすいビーチだ。
 浜は珊瑚でできているからもちろん真っ白な砂浜で、まさに沖縄のイメージそのまま。なにも考えず、ただ浜に寝ころんでボーっとするのもいい気持ちだと思うが、まだ熱射にやられていないふたりは(年甲斐もなく?)さっそく海に飛び込んでいった。

遠浅の海  飛び込んでいったというのは、実は嘘である。なにしろ遠浅も遠浅、どこまでいっても海面は延々膝下なのだ。振り返るとビーチが遠くに見えるが、それでもやはり膝丈なのだ。引き潮タイムだったせいもあるし、たぶんもともと、かなり外洋までいって突然ガクンと深くなるタイプのビーチなのだろう。
 が、そこまで行くのもなんか怖い感じがして、途中で引き返した。

 引き返したもうひとつの理由は裸足だったこと。フィンを持ってきていたのでシューズはいらん! とおいてきてしまったのだ。判断が甘かった。浅すぎてフィンなど使えやしない。
 竹富は珊瑚でできた島なのである。ということはつまり“尖ってる”ということなのだ。尖っているとはいっても砂状に細かくなっているところはまだ大丈夫。ところが海に入ると遠浅ながらもところどころに小さな礁があり、また折れた枝珊瑚なども潜んでいる。うっかり踏んでしまったらもう大変だ。下手をすればスパッと深くえぐれるくらいに大変な傷となる。おかげではしゃぐこともままならない。しかも、そんなに用心していたのに、結局踵をズバッとやってしまうドジなオレ(しかもこれがあとでえらいことになったのだが、そのときは知る由もなかった)。ともあれ、『海に手袋と靴は必需品』を痛切した次第である。
 ちなみにぽんすけは沢登りの必須アイテム、地下足袋を持参しており、オレににやりと笑いかけるやどんどんと沖の方まで探検に出かけていったのであった。あまつさえ、野良ビーチボールを捕獲した。うらやましい。

 そんな遠浅のビーチにも生の営みはある。一番多いのは『ナマコ』。黒くて野太いナマコはまさに足の踏み場がないほどごろごろしていた。一見犬の糞を思わせるグロい姿だが、水中メガネで大接近してみるとこれがけっこう可愛い。色も真っ黒ばかりではなく、斑点のあるヤツ、白っぽいヤツなど、バリエーションも多彩なのである。
 もちろんナマコばかりをを見ていたわけでない。点在する小さな珊瑚礁やイソギンチャクの群落には、これまたそれに見合うサイズの小さなクマノミなどを見つけることができる。水族館にいるような立派なサイズではなく、体長1、2センチ程度なのだが、ガラスで隔てられた水族館で見るのと、生で(とはいっても水中メガネで隔てられているのは変わらないのだけれど)見るのとでは印象がまったっく違う。ちょっと感動した。

 そんなコンドイ浜で、しかし一番すごいと思ったのは実は水温だ。ギランギランの太陽に照らされて浅い浜の海水の温度は温泉なみ(各種イオン成分が溶け込む海水である。温泉と言い切ってもいいかも)。しかし、そんなお湯状態で魚たちは平気で生きている。ゆだらないのか? という不安も疑問もなんのその。なるほど本当に熱帯魚なのだなぁと妙に感心したのであった。


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