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八重山にマブイ落としに  …18

 超ウルトラスーパー   

 博物館や御獄や井戸と結構精力的に自転車をこぎ、午前中で市街地はだいたい見切ってしまった。計画上ではこれで一日の予定はおしまいだったのだが、時間がわりと残ったので、午後はレンタカーで遠出してみようではないかということになった。
 しかし時間は午後1時すぎ。こんな中途半端な時間に果たして車が残っているのだろうか。案の上、いくつかの営業所でもう車は出払ってしまいましたという悲しいお知らせを聞いた後、ガイドブックで見つけたレンタカーでようやく一台の軽自動車を借りることができた。
 ガイドのうたい文句によると、『超ウルトラスーパーガイドサービス』とある。いったいなんなんだかよくわからないし、どうにも胡散臭い。が、まあいいやぁ的テーゲー魂に従って行動するふたりである。気にしない、気にしない。
 実際に営業所に行ってみれば別にごく普通のレンタカー営業所である。しかし、いろいろと話をしているうちにその『ガイドサービス』の正体がわかってきた。
 その営業所はとてもフレンドリーなネェネェ、ニィニィが切り盛りしていた。で、このふたりがそれはもう微に入り細に入り、いろいろと案内をしてくれるのだった。
 曰く、「川平まで行くんですか。なら、30分もあれば行きますからねぇ。それだけなら4時間だけのレンタルでいいですよね。あ、もし明日も借りるなら2日間レンタルのほうが安いかもしれませんよ」
 そんなレンタルに関係する案内だけならよくある話し。が、
「夕食はどうされるんですか? 地元の居酒屋ですか。だったらこの店がいいですよ、安くて旨い。え? ○○亭ですか。う〜ん、確かに美味いけどちょっと高いんですわ」
「ソバ食べました? 最近新しい店見つけたんですよ。ウシソバ。ブタや山羊じゃなくてウシ。ね、あんまり聞かないでしょ、でも旨いんですよ〜、これが」
 もう、普通の観光客用の案内とは思えないローカルなネタである。ガイドというよりは友人の情報交換に近い。う〜ん、こりゃ確かに超ウルトラスーパーガイドである。オレたちはこんなターゲットの狭いガイド(といっては失礼かもしれないが、もちろん誉め言葉なのだ)にクラクラし且つとてもうきうきと嬉しい気分になったのだった。

 ちなみに紹介された居酒屋には結局行かなかったのだが、翌日、昨晩の夜に行った創作居酒屋のことをネェネェに報告すると(翌日もレンタルしたのだ)、
「美味しかったでしょ。実はその店、高校の友達の家族がやってる店なんですよ」
と告白された。
 世間が狭いのか人間関係が広いのか。ま、両方なのだろう。
 それにしてもカーレンタルして観光するよりも、営業所で世間話をしてるほうが楽しいかもと思もわせるというのは、それもひとつの芸なんだろうな。


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