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砂漠には誰もいない。ということはなかった。
もちろんバスに同乗してきた観光客の方々は砂漠へ入ってくることはなかったが、そこには別の種類の一団がいた。オフロード関係の人たちだ。
4駆も何台かいたが、一番すごいのはやはりバイクである。オフロードバイクの集団が山の上から列になって駆け下り、そして別の山に立ち向かっていく。それはさながら荒野を走り回る荒くれ野郎どもだった。
まるでマッドマックスの一場面のような… と思い浮かんだところで急に不安になってきた。もし奴らがただのオフローダーでなかったら。もしアウトローだったら、山賊だったら、どうする、どうなる。どうなるんだ!
そんないい歳こいたオヤジのくせに思いきり子供思考に退行しビビっているうちに、土埃の帯はあっという間にこちらへ近づいてくる。ああ、危うし!
バイク野郎たちは目の前を疾走して、見る見るうちに遠くへ駆け抜けていた。考え損、というよりは妄想し過ぎというべきか。我ながらバカだなぁ(もっともそれは薄々気付いてはいた)。
彼らが走りぬけていったということは、彼らの向ったほうに行けば道にでることができるということだ。とすれば道に迷いかけている我々にとっては彼らは悪党どころか救いの神である。
というような実はかなり無謀な状況になっている、道なき道を進む我々3人であったが、道がなくて不安ではなかったのか?
確かに行方不明者が出るくらいなのだから、あまり適当で無軌道な行動をとるのはさすがにまずいだろうとは思っていたし、実際そんなに無茶はしていない(はずだ)。山の上から位置関係も見ていたし、そして簡単な地図は持っていたし、概ねこちらの方向で道にでることができるのはわかっていた。いざとなれば来た道を引き返せばよいのだ。だから道がなくなってもさほどの心配はしていなかった。
もちろんこれが命取りだったのは言うまでもない。