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こんな地味な入り口なのに 暗がりに突然これは怖い ひ弱な男達が働く フラッシュに浮かぶマネキン 安全のためじゃないのか?! いわれなくても身動きできないね |
しかし今日の予定はさらに続くのだった。
琥珀資料館からほど近い渓谷で湧水コーヒーを味わったりとゆったりしたにもかかわらず、まだその日の宿にチェックインするにはまだ時間があるので、今度は久慈近辺特産のもうひとつの鉱石であるマリンローズの博物館『マリンローズパーク野田玉川』に行くことにする。学名ロードナイト、和名バラ輝石。確かにバラ色である。しかし少々野暮ったい印象がなくもない。(こういっちゃ失礼なんだけれど)とりあえず時間調整的な気分でやってきたのだ。悪かった。凄かったのだ、ここは。
この日、3カ所目の発掘現場をそのまま展示館にした地学系施設ということで、心のどこかで「もういいだろ」という気分があったのは事実である。しかし坑内に入ってみてそんな気分は吹き飛んだ。猛烈に長い。延々と続く長い地下回廊を進む。どこまでいっても穴の中なのだ。しかも実際の採掘抗なので掘り跡も生々しく、しかも閉館間際で他に客もなしときたら、気分は完璧にダンジョン探検隊である。もちろん奥には宝が眠っているのだ。
人力で掘り抜いてきた穴だけにいろいろと細工もある。広いホールや、さらに深部へと続く縦坑の昇降機。また、中での作業を再現したマネキン達が要所要所で歓迎してくれるのだが、これはちょっと怖いかもしれない。
しかし一番怖いと思ったのは、天井を走る大きな亀裂を木材で支えているのを見たときだ。漆黒の闇の中でどこまで延びているのかわからない1メートル程のすき間を何十本というつっかい棒で支えている。もちろん安全性は確保されている(はずだ)とはいえ、見上げるといかにも貧弱でいつプチッといってもおかしくない。暗くてわからないから怖いのかもしれないが、逆に奥の奥まで延々と直径20センチ程のつっかい棒が並んでいるのが見えても怖い。つまりいずれにせよ怖いのだった。
もうひとつの特徴は後半にあった。
トーチカのような元会議室が奥にあった。ここが今は展示室として使われている。なんの? もちろん石だ。様々な鉱物を系統だてつつ、しかもこれでもかという物量作戦的なアイデンティティの元、全国の特産鉱物から世界のレアメタルまであまたの鉱物が展示されている。石ヲタクが泣いて涎を流すに違いない。
そしてこの怒濤の展示はホールだけではなかった。そこから出口までの長い道のりはすべてがギャラリーとなっていて、そのサイズもさらにパワーアップ。欠片なんてしゃらくさいドカンとおきましょうと掛け声をかけたくなるデカい代物。さすがに“もうお腹一杯”状態で洞窟から出てきた一行であった。