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みちのくの駆け足旅  …11

 太平洋に夕陽は沈む   

夫婦岩
海女の北限地の夫婦岩
夕景
小さな港に夕陽が沈む
撮り合い
無意味に撮りあっている

 今日はこれで宿に戻ってもよかったのだが、地図をつらつら眺めていると帰路上におもしろそうなスポットがみつかった。まず海女の北限地。名前のインパクトに惹かれる。そしてもうひとつ、今日一日、ずっと地下に潜っていたので開けた風景の気分もあった(潜るという部分では一緒かもしれないけれど)。時まさに夕暮れ、海岸に沈む夕陽を眺めるのもいいだろう。
 が、
「しまった! ここは太平洋だから水平線に沈む夕陽なんかないじゃん!」
「そうだったー!」

 それでも、とりあえず山道をぐるぐると曲がりながら進んでいくと、突然海岸線が現れた。これが三陸名物、リアス式海岸だ。海岸線に沿って走る道路はひとカーブを曲がる度に景色がかわる。面白い。もっとも運転しているぽんすけにとっては細くて先の見通せない道はけっこう神経を使っていたのかも知れないが。

 さて、そうこうするうちにようやくとある小さな港に辿り着いた。そこが海女の北限地だった。
 なにもなかった。海女センターがあると地図には書いてあったが、それは展示施設というような想像を裏切るたんなるトタン壁の小屋。ようするに海女の控え室みたいなものなのだろう。漁船を利用しての遊覧コースや海女の実演ショーがあるとはいえ、それは付け足しみたいなもの。すでに日没間近の夕刻ともなれば、ただの小さな漁港でしかない。しかしだからといってうら寂しいのかというとそうでもなく、港は夜のイカ漁の準備でそこそこに慌ただしかったのである。

 夕刻、陽が沈む。東岸に夕陽はない、と思っていたのだがリアス式マジックとでもいうのだろうか。水平線というわけにはさすがにいかないが、海岸沿いの海に夕陽がかかり、海を、そして港にそびえる夫婦岩の壁面をオレンジ色に染めていた。のんびりとしたいい絵だ。これが見られただけでも来た甲斐があったとそう思えた。ま、実際にはのんびりと観ているというよりはシャッターを切りまくりといったほうが正しかったのだが。

 ところで港にはおなじみのかもめの群が岸壁のテトラポッドにとまっていた。ぽんすけは何を思ったか、ビデオを護岸にセットするとカモメに向かって駆け出していった。インディジョーンズである。が、カモメは動じることもなく、数羽が軽く飛びたっただけ。見ているこちらは拍子抜け。かなり間の抜けた行動となってしまった。
 救いは我々以外に誰もそれを観ていた者はいなかったことだった。

 その夜は、近くの国民宿舎で一泊。夕食で美味い魚に舌鼓を打ち、そのあとはいつものように酒… には走らずになぜか超初心者囲碁三昧というちょっとかわった夜となった。



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