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みちのくの駆け足旅  …12

 地中の犯罪者(小者)に鉄槌あり   

入り口
まるでなんかの作業現場入口
メット
地中を堪能するヘルメッター達
へんな看板
泣き所といわれてもねぇ
低い天井
頭をぶつけそうな洞内
ロケット
ある意味もっと別のナニカ
地下深く
洞内を走ってはいけません

 明けて翌日。またまたピーカンで、しかも今日もまた地下探検の一日である。まったく間が悪いといったらない。
 目指すは日本三大鍾乳洞のひとつ龍泉洞である。ポカポカ陽気の晴天の下、のどかな山道を車は走る。鍾乳洞までは1時間ちょっと。車窓からみえる田舎の景色は心の奥底に眠る原風景をかきたててやまない。う〜ん、写真におさめたい。が、一応団体行動なので車を止めて撮影会というわけにもいかない。いつかまたここにきて写真を撮ろう。と心に誓い、今は目にしっかりと焼き付けておこうと思う。

 そうこうするうちに車は鍾乳洞に到着する。もっともそこは本来の目的地ではなく安家洞というもうひとつの鍾乳洞である。遠目にはなんとなく場末た感じで、手放しで突入という気分にはならない。が、とりあえず入るかどうかは別にして、トイレ休憩がてら入り口だけでも観てみようかということになった。
 行ってみれば、そこははじめの印象どおり、観光地として整備されているというよりはとりあえず穴があるので開いてみましたという感じは強まるばかりなのである。
 一応弁護しておくが、安家洞は全長1万2千メートル日本最長最古の国指定天然記念物なのである。ただ、いままで持ち主の意向で一般への公開がされていなかったのだ。しかし最近持ち主が代わり、ようやく新たな観光スポットとして動きだした。今後に期待。そういうタイミングだったわけだ。
 というわけなのだが、それはそれとしてその地味さにどうしたものか、オレは少々逡巡する。しかし、ぽんすけは異様に乗り気なのであった。
「だって、ヘルメットかぶれるんだぜ」
 いったいどういう理由なんだか。まあ、確かに秘境ムードはある。岩手が誇る2大台鍾乳洞を見比べるのもいいかもしれないね、ということになった。

 確かに中は広い、いや長い。1万2千メートルはダテじゃない。一般公開しているのは入り口から500メートルだけなのだが、それでも行けども進めども先は見えない。ただ薄暗く狭い地中を全身を使って進む。油断すると頭をぶつける。足をとられる。かなり危険かも知れない。少なくとも浮かれながらは危険だろう。

「こういう洞窟ってさ、なんかプリミティブな大地のパワーを感じるよね」
「古代宗教はそういうところから始まったんじゃないかね」
「古来からこういうところには神が宿るんだ」
「アッカ神だ」
「未開の土地の宗教っぽくていいぞ、それ」
 いったい鍾乳洞にはいってなんちゅー会話をしているんだか。

 そうこうするうちにようやく突き当たりまで到着する。これ以上は地下水脈で行く手をを阻まれている。とりあえず、ここから先はダイバーの仕事ということだ。
 側洞があったりもし、先に進む道も実はあるのだろう。水の奏でる音が奥から聞こえてくるのできっと地中川があるのだ。そういうのも見てみたい気持ちがないわけではない。でも地中探検はこんな程度でいいやとも思う。観光として楽しめる距離というのがあるのではないか。ようするにへばる前に出たいというだけの話なのだが。
 というわけで来た道を引き返す。道すがら、これから奥へ進もうとするカップルが複数いたので、ちょっと遊び心を発揮したオレは、彼らに聞こえるように、いや彼らに聞かすために、そばにいたみやくんに話しかけた。
曰く、
「いやぁ、あの地中湖。真っ青に光ってて凄かったねぇ。ヒカリ苔が映りこんでるのかね」
「しっかしこんなに長いとは思わなかったよ。延々1時間も歩くことになるとは」
大嘘吐きまくり。彼らがどう思ったかを想像するだけでなんかワクワクする悪人なオレ。
 その直後。天井から下がる鍾乳石におもいきり頭をぶつけてしまった。その勢いで足も滑らせる。ああ。
「アッカ神の怒りを買ったね」
と、みやくんにつっこまれたのであった。

 しかし実はアッカ神の怒りはそれですまなかったのである。



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