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今日のお宿はここ 目の前は石垣港。夏全開状態! |
石垣港わきのその日の宿に荷物を預けるとちょうど(ちょっと遅れめだけど)昼食の時間だった。
旅に出る前から「牛喰いて〜、石垣牛が〜」と半ばサブリミナルな洗脳的リクエストをしていたぽんすけの意見を聞き入れ、石垣地麦酒のレストランダックスブロイ石垣に向かうことにする。ここでは石垣牛のステーキが楽しめてなおかつ地麦酒が飲めるという我々にとって一石二鳥、手ぐすね引いて待ってます的な罠、というような店なのである。
早速タクシーをつかまえて店へと向かう。
タクシーの運転手は気さくで話し好きのオバチャンだった。
「今年は台風はどうでした?」
「いつも通りさあ、こっちじゃ(風速)30メートルぐらいじゃ普通に走っているからね」
「ふえぇ」
「そうだねぇ、40メートルぐらいからかねぇ」
おばちゃん曰く、風速の2、30メートルくらいでは誰も驚かず、店も会社も平気で開いている。だから車も平気でバンバン走るのさ、ということだそうだ。40メートルを超えると市役所が警報を流し、そこではじめて避難でもしようかねぇということになるらしい。果たしてどこまで本当なのか分からないが、なんとなく信じられる気にさせるのがこの島の空気だった。
「今晩は酒場で飲もうと思ってるんですけどねぇ」
「気をつけた方がいいよう、お金がいくらあっても足りないさ」
「いやぁ、もともとそんなに持ってないから大丈夫でしょう」
「だめだめ、尻の毛まで持っていかれるさ」
そういうとおばちゃんはカラカラと笑った。なんちゅー会話だ。
話は変わるが、この旅の帰り、駅から家までタクシーを使ったのだが、やはりこれが話し好きの運転手。しかも沖縄に近々行く予定ということで沖縄話に花が咲いた。曰く
「ラフテーは美味い。あれは泡盛でじっくりにるから美味いらしい」とか、
「沖縄のゴルフコースは高い。パブリックでも高い」(オレはゴルフをしないのでこれはよくわからない話だが)とか。
もちろん夜の店の話にも至ったのだが、運転手は「日本全国どこでも通用する技だよ」といって裏技を教えてくれた。簡単な方法である。“タクシーの運転手に紹介してもらった店は基本的に安心していい”。悪い店を紹介したタクシーは次に利用してもらえなくなる。だから信用問題として、タクシーの運転手はいい店を紹介するのだ、という。さらに付け加えるならば“運転手の名刺をもらうとよい”。すんなり渡してくれたなら、そこは絶対大丈夫。運転手が言うんだから本当だし、自分もそうやってるからね。ということだそうだ。なるほど。
話は石垣時間にもどる。
実のところ我々、こんなに話好きというわけではない。しかし旅のはじまりの高揚感と、なによりもオバチャンの島のイントネーションにクラクラきており、ついつい話をふってしまったのだった。
タクシーはあっという間に店に到着した。別れ際、オバチャンは、
「ここはめったにタクシーが通らないから食べ終わったら呼んでみてね」といって、名刺を渡してくれたのだった。
その後、力一杯酔っぱらった結果、いろいろな判断ミスを繰り返し、街まで歩いて帰ることになるのだが、その道すがら、すれ違ったタクシーの運転手がこちらのほうを見、ニッコリされた。それは先ほどのタクシーのオバチャンであったことはいうまでもない。別にそれがどうというわけではないのだが、ちょっぴり嬉しくてちょっぴり気恥ずかしい再会であった。