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とりあえず乾杯! 予定と違うがこれもよし ピッチャーではない?! 気持ちのよい道すがら ここで大量購入予定 |
店内には思いの他、人がいない。平日で、しかも2時過ぎともなれば当然だろう。しかしなにぶん小市民なもので、あまりにも人がいないと「店貸し切り! フロア独占!」という喜びよりも「なんかいたたまれないなぁ」という恥じらいを感じてしまう。ちょっと情けない。
ともあれ、牛と麦酒が待っている。そそくさと席に着く3人だった。
石垣地麦酒は、去年の来島時に街の中心街のアーケード内にあるこのブルワリーのアンテナショップで飲んではいたが、しかしそれは瓶で、ジョッキで飲むのは当然初めて。やはり麦酒の王道はジョッキ。ワクワクしながら注文する。
もうひとつの目標である牛だが、これがびっくり。ステーキ3千円と、ランチとしてはちょっと値が張りすぎており躊躇せざるを得なかった。結局、焼肉セットで麦酒を飲み、あとは各々がランチ用の定食を選ぶという妥当な判断となった。「石垣牛!」という当初のイメージとは変わってしまったが、八重山の味を楽しむことができたのでそれはそれで正しい判断だったと思う。
さすが南国、豪快なり。と驚いた。なにがといって麦酒の器が、だ。初めの一杯は地ビールの全種類をとりあえず飲むとために3人とも普通のジョッキで回し飲みといういつもパターン、その後は一番美味かったヤツをピッチャーで、とこれまたいつものパターン。
が、出てきたピッチャーを見てビックリ。これはピッチャーではない。どう見てもボトルだ。いかにも地麦酒らしいズシリとくるビンは、とてもではないが片手では持てない重量感で、注ぐにも一苦労。
「なんなんだよ、これは」「こんなに飲めるかぁ?!」
酒が回り始めていた3人は、それを見て急におかしくなり笑いが止まらなかったの。
ピッチャーは3リットルもあり、さすがのビーチャーな我々でも飲みきるのは容易なことではなかった。であるから、飲み終わるころにはかなり酔っていた。そして酔っぱらいの常として、その酔っている状態を自覚していなかった。事態は急速に悪い方向へ(あるいは笑える状況に)進んでいるのに気づく由もなかった。
泡盛の酒蔵のひとつである八重泉酒造はこのブルワリーと目と鼻の先にあった。となれば当然行かねばならんでしょう。買い出しせずばならんでしょう。ということになった。去年もこの八重泉酒造には訪れていたが、その時は車で乗りつけたので試飲することができなかったので、今回はドーンといけるもんね、というわけである。ドーンと試飲しに行くというのもよくよく考えればせこい話ではあるが。
夏の陽射しを楽しみながら、途中花の写真なども撮りながら、それでもほんの十分も歩けば到着である。「よしっ」と気合いを入れあい店内に入る。中央にしつらえてある試飲のボトルを端から順に勝負する。
「前回、買った『樽』はやっぱり美味いけれど、こっちの『黒真珠』もウイスキーに似てて面白いよね」
「別に古酒だけが泡盛じゃないね。こっちの3合ビンだって、飲みやすくてでも泡盛臭くてなかなかにいい勝負してるさ」
などと言いながら取っ替え引っ替えの飲み比べである。いや、飲み比べているというよりは“飲んで”いる。しかし当の本人たちはあくまでもどれを買おうか物色しているつもりなのだ。実際、購入もしたわけで義理は果たしているはずだ。一人概ね数本、まとめて宅配で送ろうと注文票でまとめると、全部で20本近い買い込みで、後日届いたそれはひと抱えもある段ボールにびっしりと詰まっていた。う〜ん、すごい。
さんざん略奪の限り(?)を果たした我々に対し、店の人はたくさん買ってくれてありがとうと、3合ビンをサービスしてくれた。嬉しくて目頭が熱くなったが、それでなくても暑かった。