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八重山へ今度こそマブイを拾いに?  …6

 河面遡上カヤッカー   

上流をみる
これから行く川を見る。臆したのか?
気合
気合いが入ってきたか?
河面
広い川面に心も弾む
バウ
自艇からの眺め
うしろ
ふりむけば、あまり進んでない
ぽんすけ
ハイテンションな笑み
漕ぐ
ひたすら漕ぐ

 大原港で我々を待っていたのは、今日これから挑戦するツアーショップ「南見風ぱぴよん」からのお迎えだった。もう一組の同行者とともに店に運ばれ、あたふたと準備を整えると、今度は大原港へとって返し、仲間川河口へと到着する。
 今日は一日かけて仲間川をカヌーで堪能するのだ。天気はド!ピーカン。微風すらないカヌーツアーにはまたとないコンディション。と思ったら、本当はそうでもなく多少は風が吹いていてそして雲があった方がよいのである。その理由は後で嫌という程思い知らされることとなる。

 我々3人の他は女性2人組、そしてインストラクターのホンゴーさんの計6人のパーティーである。聞けばオレ以外はカヌー初体験だという。仲間川は初カヌーとしてはかなりいいんじゃなかろうか。
 さて、簡単なレクチャーとセッティングを受け、カヌーに潜り込むとさっそく川にエントリー。
「さあ、がんばっていきましょう!」
という明るすぎる程に明るいホンゴーさんの掛け声とともに我々は上流を目指す。

 幅の広い川で流れがほとんどない、いや満潮なので逆に上流に向かって流れている。川底も浅く、パドルを立てると三十センチ位で川底に突き当たってしまう。これでは歩いて遡上することも簡単に出来てしまうし、なにより沈の心配が、正確には沈しても怖いことにはならないですむ。案の定、漕ぎ始めて三十分位だろうか、女性チームの一人が沈してしまう。バランスを崩してストンと倒れた感じだった。カヌーは水の上にちょこんと浮いているだけなので、川が浅くても深くてもあまり関係ない。だからこそこの川で乗ることが出来るわけだが、逆をいえば沈するときはする。もっとも、まあ、なんといっても水深膝下である。浅くても窒息してしまうことがないとはいえないが、まわりに助け船も多いし、浅いことからパニックなどを起こす心配もなく、笑い話のネタ程度ですんだ。
 と偉そうなことをいっているオレだが、実のところ経験者といってもほんの2回程度のことで、初めのうちは艇と身体がいまいち馴染まず、時折フラリと身体がぶれて、ヒヤリドキドキすることもはじめのうちはあったのだが、しばらくすると体も慣れ、気持ちよくカヌーは前に進み出す。そのころには他のメンバーも感をつかんできているようで、カヌーを楽しみだしているといったところだった。なんのことはない。全員同じ程度の初心者パーティであったということだ。
 西表島の川の常として(?)、ここ仲間川も観光船が走っている。小回りの利くカヌーはこれを避けながら進んでいく。しかし衝突の危険よりも、避けるつもりで浅瀬に座礁するほうが怖かったりするのが面白い。
 そんな苦労(?)も知ってか知らずか、我々を追い越していく遊覧船。スタッフは我々を指して、 「この川は流れも緩やかでカヌーにも向いておりますので、今度来たときはぜひカヌーを楽しんでください」と、乗船の客に向かって説明する。となれば乗客たちは当然のようにこちらに手を振り、頑張ってと声援をかけ、必然的に我々もパドルをふって合図する。ちょっとヒーローになった感じでもある。安いものだ。

 西表のカヌーツアーでの見どころはなんといってもその生物層である。
 ジャングルのような、ではなくて本物のジャングルのマングローブの鬱蒼とした林も凄いが、その中で生息する生き物達を見るのもまた面白い。例えば白い砂の中州にびっしりと並び、大きなハサミのコミカルなダンスを踊るシオマネキ。全然動かずなにをしているのか判らない白い鳥。時折河面に跳ね上がる魚。
 釣師長丼は魚いたく興味を示す。
「釣りする人っているんですか」
「いますよ。カヌーからキャストする人もいますしねぇ、大きいのを釣ってますよ」
「うーん、そうか… そうかぁ…」
 長丼にとっては涎ものの情報である。その後は、うん、いいなぁ、いいなぁ、としきりに口ずさんでいた。

 さてカヌーは川の上。となれば当然日光を遮るものもなく、容赦なしに全身に降り注ぐ。天気はよすぎていかにも危険だったので、とりあえず日焼止めを塗り込み、この日のために準備したクールマックスの長袖のTシャツを着込み、よしこれで大丈夫と、思ったのが大間違い。弱点は手の甲だった。常にパドルを振り回しているので水がかぶり塗ったオイルなどあっという間に落ちてしまう。これはかなり厳しい。
 すでに真っ赤になった手を少しでも休めようと、漕ぐのをやめ水にをつける。生温い水でもとても気持ちがいい。気持ちのよさに気を取られると、デッキの上に置いたパドルが水面に触りあっという間にバランスが崩れ、粗沈の危機を誘発したりするので侮れないのである。


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