…2
ゲレンデにしか雪はない まだ正月気分か 豪雪時の坪庭 典型的な雪山的風景 でもって1月はこんな感じ それでも多少は雪山気分 五辻に到着 |
さて。朝7時。いよいよ出発である。渋滞もなければ雪もなく、車はあっという間に北八ケ岳麓に到着する。天候は曇り。ちょっと寂しいが、吹雪かれるよりはましである。
コンビニ脇に買い出しがてらに車を停め、ひと思案タイムである。なにしろ現地に来たものの、どういうルートで行こうか、これまた決まっていなかったのだ。別に行き当たりばったりというわけではなく、あまりにも雪がなければ車で奥までいってそこから歩くほうがいいのではないかという案や、とりあえずの目的地は麦草ヒュッテだが、雪のあるなし混雑などの状況によっては黒百合ヒュッテまでいくという案もあったからだ。
現地に到着してみると、雪は確かに少ないがないわけではない。路面が凍結していて車で登るのは危険という状況がはっきりしてくる。
ということで、結局、ロープウェイで坪庭まで登り、縞枯山をまいて麦草へ向かうルートを選ぶこととした。このルート、実は去年、ぽんすけ隊員と南亭隊員が使用したルートである。スカスカ雪とはいえ、まったくはじめての雪道を行くのは無謀だろうということで、やはり雪山を舐めてはいかん。いつもはバカでも無謀な真似はしない。山蟲隊も大人になっているのだ。
ロープウェイはゲレンデを眼下に望みながらのんびりと山を上っていく。思いの外、スキーヤーは少ない。スノーマシンのおかげでゲレンデ上に雪はあったがコースから外れるとそこに雪はなく、すでに3月末の春ゲレンデ的なムードを醸し出している。
そうこうしているうちに坪庭に到着してみれば、おお、とりあえず雪があるではないか、さすがに山頂の面目躍如(?)。下草が見えない程度には降り積もっている。
オレとしては思ったより雪あるじゃんと思ったのだが、去年同じ時期に来ているぽんすけに言わせると、
「全然ない」
去年は笹野原の上まで雪が積もり、多少なりとも雪中行軍の雰囲気があったのだそうだ。確かにまわりを見ても白一色とはいいがたく、ところどころ雪がない場所もあったりするのだから、冬としてはないほうなのだろう。
実はこのときから1ヶ月後に、オレは再び北八ヶ岳を訪れている。他の者がスキーを楽しんでいるあいだに、オレはひとりスノシューで坪庭を一周してみたのだが、雪の量はあきらかに違っていた。1メートル、ところによっては2メートルくらい厚みが増しているのだった。ようするに1月ではまだ早すぎるということなのだ。
さてそんな、状況としてはベストとはとうてい言えない状態ではあったが、ここにきてようやく雪山に来たという実感が湧き、テンションも次第にあがってくる。自然の中でテンションがあがればこれがホントのナチュラルハイか。なんだかんだいってふたりともひさしぶりの山行を楽しんでいるのであった。
オレはスノシューと軽アイゼンとどっちを使おうか悩み、結局軽アイゼンをとった。雪の量と長距離を歩くことからすればスノシューはかえって邪魔になりそうだったからだ。対してぽんすけはスノシューを使用する。せっかく持ってきたからというのがその理由らしい。どちらが正解ということはない。自分が満足できればそれが正解なのだ。
途中、東屋があり、そこで昼食タイムとする。まとめて人数分作るのではなく、それぞれが自分専用の飯を作る。本当ならば“まとめ”のほうが効率がいいのかも知れないが、山蟲隊の場合は概ね個々に作ることが多い。まとめ作りとなったらヘンに気合いとが入って凝ったことを始めてしまい必要以上の荷物になってしまう可能性が高いのでこのほうがいいのだ。
さて、昼食後再び歩き出す。天候はいまだ回復せずどんよりとした雲行きである。行程は緩やかな下りで、ときおり木の根が飛び出していたりするのを除けば実に歩きやすいルートだった。時間と雪の量のせいか、あまり人には会わなかった。もしかして本当に誰もいないんじゃないかと思うとたまにすれ違ったりする。
ルートが五辻の出会いを過ぎ、ロマンス街道にもう少しというところで、大学生らしき一行とすれ違った。彼らはXCスキーを背負っての行軍である。
「雪、どうですか」ときくと、
「全然ないですねぇ」とのこと。
彼らはロマンス街道をスキーで一気に下まで降りる予定だったのだと言う。
「でも道路は皆無で全然ダメですよ。アスファルト見えてますからね」
ああ、がっかり。
エールを交換しあい、我々は再び小屋へ向かう。