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白黒世界 ルートといっても真っ白け 美しい沢も落ちれば地獄 |
休暇村のコースは大きくわけて3つのルートにわかれている。別に広大なフィールドすべてがコースといってしまえばそのとおりなのだけれど、圧雪してあるほうが滑りやすく足慣らしにはちょうどいい。
とりあえず適当にコースを選び、いざスキーイング。
ひさしぶりの雪遊びであった。昔はただずりずり横滑りするだけのXCのどこが面白いのだろうと思っていたのに、今では「だから面白いんだよ」と思う。普段と異なる空間、見渡す限りの白銀の原に包まれる異境感とでもいおうか。ゲレンデスキーが疾走の快感であるとすれば、XCスキーは、少なくともスピードレースとしてではないXCは非現実の快感である。
より実利的な楽しさとしては、外気温が低いおかげで汗だくになることなくアウトドア体験ができるということだろう。例え熱くなっても、ちょっと立ち止まっていればクールダウンは思いのまま。問題はそれが風邪にてきめんに効果あり(悪いほうに)ってことなのだけれど、楽しければ万事オーライだ。
さてそんな受かれ気分のXCだが、見るとやるとじゃ大違い。実は横に移動するだけの単純なスポーツではない。やってみてまずわかるのは、エッジが効かないスキーはなんて扱いづらいのだろうということ。ふんばりが効かないのでスケーティングも難しい。だからきちんと板の上に体重を乗せて蹴り出さないと、あっという間に重心がくずれて雪中に体が放り出されることになる。
ぽんすけ隊員がそのトラップにまんまとはまったのだった。「あひゃ〜」と言う声に振り向けば、雪まみれのぽんすけ隊員がいる。それも一度や二度ではない。そのひっきりなしの状態をもって彼は今回の『転倒王』に見事任命されたのである。一応フォローしておくと、ぽんすけ隊員はなまじゲレンデスキーができるせいで(性格のせいもあるかもしれないが)かなりアグレッシブに滑ろうとする傾向があるらしい。そのせいでついバランスを失うことが多くなるということなのだ。
オレ自身はあまりスピードを出そうとはしないからか、滑って転倒はなかったが、ひねくれ者の性格ゆえかついコースを外れて新雪に入って行きたがる癖がある。そしてXCは実は新雪をバサバサかきわけて進むのには向いていないのだ。一見好さそうにみえるが、あまりにも雪が深いと板の先端が雪に潜ってしまい、逆に身動きがとれなくなってしまうのである。で、脱出しようと後退する。そして後ろも潜り込んでしまえば、はいそれまで。もはやニッチもサッチもどうにも状態で笑うしかなくなるのであった。経験者が語るのだから確かである。ま、普通に楽む分にはそんなことにはならないのだろうけれど、なにぶんにもついはしゃいでしまうバカなオトナ達には経験による学習能力がまったく欠如しているのである。
ともあれ1時間、みっちり雪の上を堪能した。2時間1本勝負じゃ物足りないかと思ったが、結構ヘビーでちょうどよかった。ハシャギすぎともいえる。
あとは宿にチェックインして、夕食。そして酒が待っている。はずなのだが、実はもう一波乱待ち受けていたのである。しかし、そのときはそれに気づく由もなかった。