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ひとしきり雪遊びを堪能し、休暇村から宿へ向かう。宿は休暇村からちょっと戻って五色沼そばのペンション村にあった。そして移動方法はバスしかない。が1時間もバスが来るのを待つのはちょいとバカバカしい気がする。
バスでは10分弱程度の距離だろうか。
ならば歩いても、さほどの距離ではあるまいさ、行こう!
ということで手早く荷物をまとめ、ザックを背負うと、雪道を歩き始めた。妙なテンションだった。雪ハイが残っていたのだろう。そしてそれがあんな結果になろうとは思ってもいなかった。
はじめは西に沈んでいく陽を眺めながらのんびりと歩いていた。
道は路面の雪が凍っていてちょっと歩きにくい。走ってくる車がときおりケツを振るのが怖いので路肩を行くことにした。歩道ではない。路肩に降り積もった雪の壁の上に移動し、そこを歩こうというのだ。その高低差、2メートルは確実にある。つまりまずは2メートルの雪壁を直登するところからはじまる。
で、一汗かいた後がまたとんでもないことで、今度は長い雪こぎが続くのである。壁の上は当然圧雪なしのふかふか雪でスノシューを装着しても雪に沈む。しかし、スノシューを履いたというそのことだけで、テンション値が10程アップ。
「スノー! ハイクーッ!」などと叫びながらトレースなき雪原(ふうの路肩を)歩くのだった。楽しい。楽しすぎる。やはり雪シーズンには雪を楽しまなくちゃいけない。3人は異様にノリノリだ。
ただ、ここで気をつけなければならないのは、あまり林の奥まで入り込んでしまうと、迷子になってしまう可能性があること。そしてもっと深刻なのは雪に隠れた小さい沢に落ち込むと脱出不可能となってしまうこと。こんなところで遭難しちゃたまらん。しかし、もちろん用心していればなんの問題もない。あくまでも道路から遠く離れず、そうように行けば迷子も事故もない。それは読みどおりだった。
が、大きく外したのはその距離だった。
どこまでいっても宿にたどりつかないのだ。雪こぎしながら歩くのも、いい加減疲れてきた。陽も空から消え、深紫の空に星が瞬き始めていた。
予想外だ。予定外だった。しかしもはや歩ききるしかないのだった。途中、後からきたバスが3人を追い越していった。ああ、大誤算。結局1時間以上かかって宿に到着したのだった。
それでもスノシューを思う存分使いこなしたという満足感だけは十二分にあったことだけが救いだった。