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ここから魅惑の白銀世界が… ピーカン 磐梯山噴火記念って… 全面凍結毘沙門沼 と思ったら一部蒼い所、発見 |
明けて翌日。窓からは眩しい朝日が差し込んでいた。
おお、絶好の雪行日和ではないか。予報上は曇りだっただけに嬉しい。この晴れを逃すまいとさっそくいそいそと準備を始める3人であった。
最寄りのコンビニで昼食の買い出しを済ませ、いざ出陣。五色沼の林間コースをのんびりとXCスキーでまわろうというのが今回のメインエベントなのである。気合いの入り方も違うというもの。
ルートとしては東側、毘沙門沼サイドから入り反対の西側に抜けるコースを選ぶ。条件によってはあわよくば桧原湖も… という計画だ。コース自体、普通のハイキングルートなので、結構入っている人も多いのでトレースもある。てなわけで道をロストしたりすることもないだろう。昨晩の降雪のせいで、雪はふかふか、XCにとっては絶好日和。のはずだった。
ところがしょっぱなからトラブルは発生した。
毘沙門沼に辿り着くと凍結した沼が眼下に広がる。湖面を吹き抜ける風で粉雪が渦を巻く。う〜ん、絵になるなぁ。
そんな場所だから写真家達も多く、三脚がそこここに乱立しているのだった。そのあいだを避けながら進む3人。ところがこのルート、どうにもアップダウンが厳しいのだ。我々以外にひと気もない。沼岸を巻くようにして進むその小道は確かに手摺などもあって、だから道を間違えているわけではない。念のため2万5千分の1地図で確認して見てもルートが刻まれている。間違ってはいないのだ。
しかし、それにしても… やはり引き返すべきか… さりとていったん降りた急坂をいまさら戻るのはシャク。とりあえずここは前進あるのみとばかりに先を行く。いくつかのアップダウンの後、ちょっとした急登があり、道はそこから小高い丘(というほど高くもないのだが。そう、数メートルくらいだろうか)の尾根沿いとなる。左手に見える沼はあくまでも静かに我々3人を見守っている。
XCスキーは細かいアップダウンはあまり得意ではないものなのだ。そして、それに輪をかけて我々は一人を除いて素人同然だった。
「あっ」とオレの後ろで声があがった。
ふりかえるといままで後ろを進んでいたぽんすけ隊員がいない。「おっ」とあたりをみる。中くらいの太さの樹の根本に逆さまになって彼はいた。太い幹の根元は雪が少なく、雪面はそこだけ深く落ち込んでいる。彼はそこにはまっていたのだ。下り坂でスピードがのり、止まりきれなかったぽんすけ隊員は、まんまと自然の罠にズッポリはまってしまったというわけだ。いやここはあえて激突したといってもいい。
「見事な轟転だったけど、大丈夫?」と、しんがりをゆく南亭隊員が笑いながら見守る。昨日は地味な転倒、粗転ばかりだったので、やはり派手な転は自然映えがする(?)。
「イテテ、ダイジョービだけどさ」ぽんすけ隊員は照れ笑い半分に立ち上がる。と、とたんに顔色が変わった。
「やべ、ストック曲がってるよ」
みればきれいな“くの字”になっている。
「レンタルなのに…」
その場でとりあえずどうにか目立たないくらいにまで復活させることはでき、その場はとりあえず事なきを得た。しかし、その後も、ぽんすけ隊員の転倒は続発し、『転倒王』の名を欲しいままにしていたであった。