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台北ぶらり旅  …6

 スパミュージアム! お調子者   

 起きると雨こそ降ってはいなかったが、どんよりとした天気。そしてその天気に会わせたかのように腹の調子も今ひとつで、どうにもこうにも、という感じなのだった。なんとなく気合いも入らずベッドの上でだらけて無為に時間を過ごす。
 まあ、実のところ、銀行が開く時間まではあせってもする事がないという理由もあったのだ。なにしろ、なによりも今日すべきことの一番目が兌換だったからだ。  そうこうするうちにどうやら開店の時間になってしまったようで、ごろごろしている言い訳がなくなってしまった。で、しかたなく(?)銀行へ行ってはみたが、両替をしていなかったり、レートが悪かったりと、どうも調子があわない。どうやらホテルの近くにある銀行はどこも商業銀行ばかりで、観光客などの小口窓口の両替は対象としてないらしい。結局、5軒ほどまわって、それでもどうにか現地の金を手にすることができた。ホテルにとって返し、不要なモノ有要なモノを整理し、これでようやく遊びの態勢がとれた。両替に思いの外、時間が掛かってしまったが、その時間のおかげで腹の具合も落ち着いてきたようだ。

 さて、天候と、気分と、その他諸々の状況で、さんざん迷った結果、今日のとりあえずの目的地は、市街地からもっとも近い温泉街、新北投温泉に決める。そこに決めるまで、曇りだし今日はぶらりと街歩きでもいいかなぁと思いながらダラダラと歩いていてしまい、そうこうしているうちにMRTの駅から離れていてしまい、結局、無駄に時間を使うことになってしまった。だったら初めから素直にMRTに乗ってしまえばよかったのに、なんとも間抜けな話ではある。

 電車を乗り継いで、30分強で駅に到着する。わずかそれだけの時間の移動というのに、まわりの風景が変わっている。いや、正確には最後のひと駅だけで風景が変わったのだ。新北投はちょうど街と山の境にあり、だから、街の中に、山の緑が混じり込んできている感じなのである。
 平日ということもあり、ひと気も少ない。ほんのちょっと歩いただけで、どんどん温泉の里の雰囲気に変わっていくのがわかる。山の木々の中に人々の暮らしが入り込んでいる。
 昨日一日だけで人混みに人いきれしていたらしい。自然の中に放り出され、逆に落ち着いていく自分を感じていた。気持ちが緑の中にほぐれていく。いいじゃない。いいところだぜ、新北投。やっぱきて正解だったよ。と、空を見上げると、あら不思議。青空が見えるのであった。雲も曇天の色ではなく、白い雲。山の天気は変わりやすいというが、そっちの方向で変わってくれるのは大賛成だ。

 浮き立つ気分で川沿いの道をたどる。心なしか硫黄の香りが漂ってくる。ふむ、なるほど温泉地だねぇ。とひとりつぶやきながら歩くうちに、温泉記念館にたどり着く。昔の新北投の生い立ちや温泉について解説されている街の博物館である。こういう施設にありがちなさびれ感はいっさいない。建物も展示もきちんと管理されているのだ。ただ、入り口に3人もの係員はいらないと思うが、おそらく地元のボランティアなのだろう。
 展示は当然ながら北京語と英語で解説されているため、なんとなくしか理解できないが、かといってつまらないわけではない。むしろ面白い。それは展示がいいからというよりも、この建物自体が見学しがいのあるものだったからかもしれない。昔の温泉浴場は、まるまるタイル張りの広い浴槽。窓からは心地よい風。うーん、こんなところで温泉に浸かってみたいと思わせることしきりである。

 この博物館からしばらく進んだところに露天風呂施設がある。立ち寄り型の時間制、水着着用混浴タイプの温泉だ。もちろん、水着は持ってきてはいたので問題はない。が、ちょうど休憩時間にぶつかってすぐに入ることはできない。次の開場までまだ時間があったので、さらに先へ行くことにする。


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